朧月夜
反アロウズの感情を、(視聴者に対しても)否応無くかき立たせられる演出が多かった今回。
リボンズらイノベーター組の暗躍。
沙慈の「一般人」らしさによって起こった惨劇。
そして、ようやく2期登場のアリー・アル・サーシェスの手による、アザディスタン炎上。
いよいよ「動き出した」ストーリーの初っ端からこれとは、凄まじいですな…
にしても、今回のサブタイ、「罪の意識」とか「罪の在処(ありか)」とか「自覚なき罪」とか、「罪」云々の方がピンと来るような。
全体的に、「罪」の認識の有る無しとか、その意識の有無による言動の違いとか、結構印象的だったので。
…「故国燃ゆ」のサブタイの内容がCパートだけ、っていう事で、サブタイのイメージと本編内容の印象の繋がりがちょっと弱い感じもしたんですよねぇ。
(いや、物語での出来事としてアザディスタンの件が大きいってのは分かるんですが、それよりも今回の内容としては、アレルヤの台詞や沙慈の行動の結果、等々(※各、後述します)からして、「罪」についての描写が多く、丁寧だったので…う~ん、もぅちょっとアザディスタンの状態(=サーシェスの悪行)が判明したなら、また違ったのかも知れないんですが)
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続き、upしました。
●沙慈 悪意無く罪を犯した者
「あの子供達も、君達の犠牲者だ。
君達が変えた、世界の。」
「あぁ、そうだな。」
「何も感じないのか!」
「感じてはいるさ。
…俺は二度とあの中に入る事は出来ない。」
「それが分かっていて、何故戦うんだ!」
「理由があるからだ。
分かってもらわなくても構わない。
恨んでくれても構わない。」
「刹那!…くッ…」
…流石に、沙慈~いい加減に…って思っちゃいました(汗)
あの時の刹那の内心を思っちゃうと、その辺りでただ叫んでいるだけな沙慈が、所詮世間知らず…みたいに思えてしまって。
まぁ、限られた平和の中で暮らしてきた一般人だから、ですが。
「戦う人の理由」と、向き合っていない沙慈に何と言われようと、刹那はぶれる事は無く。
『ソレスタルビーイングもカタロンも、戦いを引き起こす奴らじゃないか。
そんなところにいられるか!』
戦う者は悪。
理由なんか関係ない。
ここまで来ても、その固定概念が外れなかった沙慈。
自分は悪くない、その想いが「世界」に通じるのが当然、と思っていたワケで。
不幸にも巻き込まれてしまったこの状況故に、沙慈のその盲目さが、ラストの惨劇を引き起こしてしまった、と。
「君は戦士ではないな。」
「えっ?」
「長年、軍に居たから分かる。
君は戦う者の目をしていない…つまりカタロンではないという事だ。
一体、何があったのかな?」
連邦に捕まったのは当然というか。
でも、それがセルゲイ大佐の隊だったのは、凄い幸運だったのですよね。
…沙慈は知らないでしょうが。
「僕は、カタロンでもソレスタルビーイングでもありません。」
「分かっている。
ただ話を聞かせて欲しいだけだ。
悪いようにはしない。」
「僕にかかっている嫌疑を、解いてもらえますか?」
「尽力しよう。」
尽力…出来る限り、「絶対」では無い事にも気付かずに。
しかも、視聴者からみればセルゲイさんなら本当に出来る限り沙慈を助けようとしただろうと思えますが、これってフツーにみたら情報を引き出してポイ、になってもおかしく無い(つか珍しくもセルゲイさんが立派な人だっただけで、むしろそうなる可能性の方が…)ですよ…(滝汗)
沙慈はその辺全く認識せずに、「やっと僕の言う事を聞いてくれる人」だと安心したんでしょうねぇ。
自分は関係ないから、これで平和な日常に戻れる、と。
…その結果沙慈がとった行動は、本人そうと思っていなくても「他者の情報を売って自分の安全を買った」事に他ならないのですが。
「君の存在をアロウズに知られた。
奴らは超法規的部隊だ。
私の権限で君を庇いきる事は出来ん。」
「そんなッ?!」
「急ぐんだ!」
セルゲイ本人の意図とも異なり、沙慈の持つ情報がアロウズへ渡ってしまった。
この時もまだ、沙慈は自分のした事の意味を分かっていなくて。
自分の身がまた危険な目に合わされる…自分は悪くないのにまた不当に…という状況に憤るのみ、と。
…むしろこの時、沙慈の逃亡という責任を背負ってでも逃がしたセルゲイさんの素晴らしさが…(感動)
最近、セルゲイさんと刹那の会話、なんて展開がこの先あったら良いなぁと思いつつある朧です。
「ぁ…あぁ…ぼ、僕が…僕が話したせいで…
そんな…そんなッ
嘘だぁ―――!!」
悪意無く罪を犯してしまった沙慈。
今まで彼は、平和の中で暮らしていただけの一般人で、巻き込まれた被害者で居られた。
だからこそ、一方的に戦う人達を責める事が出来た。
だが、今回の沙慈の行動によって、多くの人々が一方的に虐殺されるという惨劇が引き起こされた。
人を殺すのは罪、戦いによって人が殺されている、戦う事は罪だ、と言い続けていた沙慈。
ですが、沙慈は戦う事無く、多くの人々を殺してしまった。
戦わなくとも、望まなくとも、罪を背負ってしまった。
まさに、
「戦わなくても、人は死ぬ」@ラッセ
の様に、戦わずとも、ましてや悪意も無くとも、沙慈の行動で多くの人が死んでしまった。
自分の行動が、自分の意図とは異なる結果として、沙慈の目の前に突きつけられてしまって。
沙慈も、罪の無い無関係の一般人、では無くなってしまったワケで。
今まで刹那にぶつけていた台詞がブーメランとして返ってきた、と。
…ここから沙慈が、どうなっていくか、ですねぇ。
ルイスとの再会も1クール中にでも来るでしょうし、そこでもまた衝撃を受けるでしょうし…
這い上がれ、沙慈!
それにしても、EDへの入りが秀逸ですね。
今回のもまた、凄く良かったです。
…これはやっぱり、CD欲しくなってきましたよ。
●ソーマ 己の望みの代償として罪を認識した者
「あれは私を恨んでいる。」
「えっ?」
「私は軍人であっても、人の親ではなかったという事だ。」
「大佐…
大佐、私あの件をお受けしようと思います。」
「あの件?」
「大佐の養子にさせて頂く件です。」
「本当かね?」
「詳しくはお会いした時に…では。」
『私は幸せ者だ…』
やっぱり養子の件、でしたね。
にしてもこの辺、物凄く良いシーンでしたよねぇ…
超兵であるソーマが人間らしい柔らかな表情を浮かべて、「人としての幸福」を抱いている、と。
蒼い空の描写がまた、平和や平穏、幸福の象徴っぽいですな。
(対照的に、Cパートの赤々と燃えるアザディスタンの空の禍々しさは凄かったですよね…)
また、アレルヤに洗礼を齎した「マリー」との対照的な、アイデンティティの違いが浮き彫りになりますねぇ。
セルゲイは、超兵であっても「ただの人」としてのソーマを。
アレルヤは、洗礼を齎してくれた存在(≒「神」)としてのマリーを。
ソーマに選択を委ねるセルゲイと、ソーマ(マリー)の言葉を聞かないアレルヤという、対比も多いですね。
…とは言え、この一連のシーンが余計に、ラストの惨劇を受けてのソーマの嘆きを引き立てていたのですが。
「このような作戦を…
大佐がこの転属に反対していた理由がようやく分かった。」
「中尉は誤解しています。
スミルノフ大佐は、任務のためなら肉親すら見捨てられる男ですよ。」
「肉親を?」
「あの男は母を見殺しにしたんです。」
ソーマもまた、アロウズのやり方に納得せず。
ただ、ここで出たスミルノフ父子の確執が。
やはり母親の関係ですか…
とは言え、肉親を見捨てたと言われたセルゲイさんがソーマを養子にと誘う様子には、彼の「人としての情」を強く感じられます。
「そんな……待ってッ!!」
うん…でも、それで待つ人は居ないんですよねぇ…
とは言え、ここでアロウズの中、その行動に疑問…というか拒否を露わにする彼女。
「私は超兵、戦う為の存在…
そんな私が人並みに幸せを得ようとした。
これはその罰なのですか、大佐…」
戦う為の超兵でありながら人としての幸せを望んだ事を、罪として認識し、望まぬ戦いを強いられるソーマ。
このままアロウズで任務を続ける事自体が、己の望む幸福と己の存在理由との狭間で苦しむ事となってしまうかもしれません。
セルゲイさんが傍に居ないこの状況がやはり、ソーマに対して不安材料となってしまっていますしね…
●刹那 過去の罪の為に戦う者
「申し訳ありませんが、私達は貴方方の様に、政治的思想で行動しているわけではありません。」
「ですが貴方方は連邦と対立している。」
「俺達の敵は連邦政府ではなく、アロウズだ。」
刹那、よく言った!
そこははっきり言って欲しかったんです。
CBの敵は誰なのか、CBの理念がどんなものか、と。
2話でしたっけ?
沙慈とラッセの会話に、その齟齬の片鱗がありましたよねぇ。
CBの敵はアロウズ、連邦政府ではない、と。
虐殺・圧制を行う「連邦を討つ」カタロンに対し、連邦の指揮下の「アロウズが行う虐殺を止める」CB。
政治的目的が何であれ、武力による戦い自体を根絶せんとするCBの理念では、あくまで敵は連邦ではなく、アロウズで。
しかも、カタロンもまた武力を用いる組織であり、状況によってはカタロンもまた、CBの介入組織となる、と。
にしても、会談に出たのがスメラギさんと刹那…って、せっちゃんリーダーっぽいね!
せっちゃんの成長が嬉しい朧です。
「その前に、一つだけお願いを聞いて欲しいの。」
「……?」
自分に出来る事を。
どんなに辛くとも、どんなに望みが薄くとも、それでも国で自分に出来る事をする為に、と国に戻りたいと刹那に伝えるマリナ。
これこそ、マリナのスタンスですよねぇ。
それが報われるかどうかは置いといて(汗)
とは言え、これの前の、子供と触れ合うマリナを見つめる刹那、の図。
…切な過ぎるよせっちゃん!(泣)
マリナが相手をした子供達に、幼い頃の自分のifを重ねて、それでも自ら親を殺めた自分の罪故に自分は赦されない、と。
そんな想い故に、目を背けてしまう刹那。
揺れてる…揺れてるよせっちゃん!
子供達を指して、構成員として…云々、は凄く納得しました。
刹那の中で、芯の部分で軸がぶれる事無くあった、むしろより想いが強くなった事が感じられて。
こーゆーのが見れて、嬉しかったですねぇ。
「何なら、そのまま帰って来なくていい。」
「……馬鹿を言うな。」
この、この時のムスッとした、ちょっと不満そうな刹那の顔、めちゃくちゃ可愛いんですがどうしよう!(爆)
前回4話のミレイナの「セクハラです!」のあの顔と同じなんですよね?!(←おいッ)
今回またステップを踏んだ刹那。
ガンダムを神と崇めていた一期序盤から、一期ラストで己と同一化、手段(刹那には銃と比喩)となった二期。
さらに今回、有力な手段であった「ガンダム」を用いる事すら無く、「マリナをアザディスタンに送る」事になったワケで。
「ガンダムありき」「圧倒的な力ありき」だった一期初期のCBからの変化が顕著ですねぇ。
…感慨深くなりますよ。
にしても、ティエリアがどういう意図で言ったのか気になります。
…まさか、マリナからのお誘いを知っていたとは思えないんですが(汗)
ティエリアの台詞、本音も多分に含まれていた様に感じます。
刹那がそう思うなら、CBではなくアザディスタンへ行っても…って。
…まぁ、刹那からすれば、「俺達はガンダムだ」じゃなくてもいいって言われたような物なので、不満げですが(苦笑)
ともあれ、この2人のやり取りがめちゃくちゃほのぼのしています…
凄いよ00セカンドシーズン!
●サーシェス 己の所業を認識しながら罪として負う事の無い者
出番は一瞬、でも、その存在の異質さ、存在の強さ故にテーマ立てします。
「あれは…ガンダム?!
しかも、あの色は…ッ!まさか!!」
「そうよ、そのまさかよォ!!」
人を殺す、戦争を行う、戦いを引き起こす。
己の行動の意味を、その事実を認識していながら、罪としての認識をする事の無い、男。
アリー・アル・サーシェス。
自分達イノベーターを、人間とは異なる(上位の?)存在と言うリボンズに、
「人間だよ。
ある意味、その枠を超えているけどね。」
と言わしめる程の。
自らの手で、武力で、「世界の歪み」をつくり生み出し広げ続ける存在。
KPSAのリーダーとして、テロを行って。
クルジスの少年兵を仕立て上げ。
アザディスタンの内紛を引き起こし。
トリニティ組を始末し。
ロックオンを討って。
世界の歪みそのものと言っても良いほど程の、存在。
5話にして、物凄い鮮烈な登場と相成りましたねぇ。
リボンズの配下として動いているみたいですが、あのサーシェスが誰かの駒で納まるとは思えないので、色んな意味で今後が恐ろしい存在です。
むしろ、リボンズらすらも利用し、用済みとなったならソッコーで排除するような気が…(滝汗)
とりあえずは、あのツーカーの台詞の後、刹那とマリナが無事である事を祈っております…
●その他
「だとしても我々は貴方達に協力したい。
補給や整備だけでも、力になりたいのです。」
…クラウス、な~んか胡散臭いんですよ、何でだろ…
シーリンの反応こそ、納得というか…う~ん…
「断固辞退する。」
「何?」
「私は司令部より、独自行動の免許を与えられている。
つまりはワンマンアーミー。
たった一人の軍隊なのだよ。」
「そんな勝手な!」
「免許があると言った。」
「一人」で軍「隊」は無いよね?!(笑)
…種デスのフェイス、みたいな物でしょうか?
司令部って事は、ビリーの叔父さんとかからっぽいですが。
にしても「免許」って…定期的な更新手続きとかあるんですかね?と言ってみる(爆)
ついでに言うと、仮面の台詞の色が困った…
何色っぽいですかね?彼。
「近い将来、彼ら我々が手を取り合う日が訪れるさ。
そうだろう、ジーン1?」
「さぁ、どうですかね…」
利用する事はあっても、仲間となる事はなさそうな気がしますが…
にしても、思いっきりライル=カタロンメンバーのままのこの状況、どうなる事やら。
っていうか、今回のカタロン→CBの描写が、違和感が強かったですよねぇ。
クラウスの↑の言葉も、そんなに簡単に言える事じゃないし。
アザディスタンを救った云々の時、ケルディムを見上げてだったし。
ライルは簡単に素顔晒しちゃうし。
…特にコレ、気になるなぁ。
あっさり取るライルはまぁそうでしょうが、それを受けてアレルヤも顔を見せちゃって、対してティエリアはそのままで。
この辺の、マイスター内でも微妙な行動の違い、が気になりますー。
「この四年間に一体何があったんだい?
君が冗談を言うなんて…」
「本気で言ったさ。」
「え…?!」
「ふっ…冗談だよ。」
ホントに 誰 デ ス カ ? (汗)
にしても、ここまでティエリアの変化を繰り返し繰り返し描かれる(しかも、それを一々トレミー組から言及されている)辺り、今後「転」が訪れる前フリじゃないかと。
それが、イノベーター関係(特にリジェネとの対比)じゃないかと。
…心配です。
「私は抜けさせてもらう。」
「ミスターブシドー、何故?!」
「興が乗らん!」
彼らしい台詞というか何というか。
何だか…乙女座の仮面さんとギアスの忠臣・ジェレミア卿がダブって見えます(汗)
乙女座って、騎士道(武士道?)精神バリバリですよねぇ。
あくまで、「正面から戦う」事こそが、って感じの人で。
それ故に、今回の一方的な虐殺には、嫌悪感を出して勝手に抜けてしまう、と。
「これが…、こいつが!……人間のやることかぁッ!!」
「逃げんなよ…逃げんなよッアロウズゥッ!!」
カタロン殲滅に、感情を剥き出しにするライル。
アロウズが天、ガンダムが地、というのも象徴的。
天地の描写が分かりやすいですよねぇ。
…とは言え、ライルが逃げんなと銃を向け続けて落とそうと躍起になっている機体が、他ならぬソーマ機、っていうのがまた歪みというかズレというか。
想いと行動が食い違ってしまう、すれ違ってしまう、この世界の不条理さが現れていますよね。
「無人兵器による、虐殺行為…
自ら引き金を引こうとしないなんて…
罪の意識すら持つ気がないのかッ?!」
一期、同胞である超人機関の殲滅を自らで行ったアレルヤにとって、罪を背負う事もせずに虐殺を行ったアロウズは到底赦せる物では無く。
凄く、印象的なアレルヤの台詞。
「これが…アロウズ…」
「そうだ。
あれが、我々の敵だ。」
アロウズ=悪、とトレミー組が再認識した今回。
各々が、自らの罪を、自らが悪だと認識した上で、断罪される事を覚悟した上で今の世界に「否」を突きつけ、変革しようとしているトレミー組。
彼らにとって、自らの覚悟も罪の意識も背負う事無くただただ他者を蹂躙するアロウズは、間違いなく「悪」だと。
…余りにもアロウズ=悪、の描写が「分かりやすい」のが逆に不安な気もしますが。
とは言え前述しておりますが、セルゲイ、ソーマ、マネキン、(あと仮面も)と一期からの各国軍人キャラは、アロウズのやり方を認めて居ないんですよね。
正規軍で自分の判断を下すセルゲイ。
アロウズのやり方に自分を追いつめるソーマ。
敢えてアロウズに入って内部を知ろうとするマネキン。
免許を翳して自分の好きな様に動くミスター・ブシドー。
それぞれの立場も選択も違いますが、この微妙な立ち居地が今後のストーリーでどんな物語を紡ぐのか、注目しています。
次回、「傷痕」